妄想と現実のはざま

私の黒歴史な日記置き場

とある現代詩の薦め

昨日から、佐々木浩さんという詩人のWebサイトで、ご本人の作品を数編収録したPDFファイルが無償配布されている。
 http://www.k2.dion.ne.jp/~h-sasaki/
これが非常によくて、僕が求めていた感じの詩があり、なんだかうれしくなった。

僕は

冗談のつもりで

あるいは

酔っ払った勢いで

つれあいが死んでしまってねと

言ってはならない嘘を言ってしまった。

場はリュー・アーチャーという名を冠したバー、

静かなカウンターが静まった。

 (上記詩集の中の、『汝殺すことなかれ』の冒頭部)

この方は、僕のマイミクシィの中で、唯一のリアルなお知り合いではない人で、とある掲示板で、僕にキース・ジャレットというピアニストの伝説的な名盤の存在を教えてくださったご縁だ。
京都にお住まいで、何冊か詩集を出版されているらしい。

日記はたまに見ていたのだが、詩を拝見したのは初めてだった。
>僕としては、「詩は難しい」という固定観念をくつがえしてみせたく存じます。
と本人が日記で書いておられたように、とても親しみやすい日本語で書かれた現代詩。

僕は長いこと、現代の人が書いた詩を読みたいと思っていたが、現代詩に入門できずにいた。
学生時代『ユリイカ』なんかをぱらばらと読んでみたことはあったが、ぱっと見では共感どころか理解すらできない描写と、読めない漢字で挫折した。
全部が全部そんなのではないんだろうけども、なにかとっかかりが得るところまでいかなかった。
しょうがないので、たまに谷川俊太郎寺山修司なんかを読んでいたが、すっかり飽きてしまったし、自分とは生きている世代が違うという思いが強かった。
一方で、テレビ番組の『あいのり』で出演者が書くような日本語が、身近な意味でのポエムなわけで。(決してあの番組にとってのヒデのポエムの意義を否定するわけではないけれども)
そんな詩の状況について、忸怩たる思いを持っている潜在的な読者は僕だけではないのではなかろうか。

この方の詩はよかった。
詩の批評なんて出来ないので、何がいいと言えないのが歯がゆいけれど、取り扱われる問題と日本語のバランスの良さ、センスについて、僕個人の感覚でいうと理想的だった。

少しでも興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
20ページ弱しかないですし。
僕は『先生』の魅力にひかれ、『汝殺すなかれ』ですっかりやられてしまった。